審神者の見合い - 3/5

見合い前日譚
 

 広間には華やかな反物がずらり。その部屋の真ん中に審神者が棒のように立ち、周りを歌仙兼定、篭手切江、乱藤四郎、次郎太刀の四振りが囲んでいた。
 それぞれが両手に美しい布地を持ち、ああでもないこうでもないと審神者のからだに合わせる。審神者はされるがままだ。
 歌仙が上品な色合いの反物を手に微笑む。
「これは素晴らしいね。どうだろうか」
「少し色味が落ち着きすぎているのでは?」
「あるじさんにはこういう華やかなのもいいと思う!」
「いいね~! 主はいつも地味な色ばかり身につけているからね」
 意見を交わし合う刀剣たち。たまたま通りかかった山姥切長義は、その様子を何とも言えない気持ちになりながら見ていた。
 しばらくして、ようやく意見がまとまったようで審神者が解放された。彼女はぐったりとしてその場に座り込んだ。思わず長義は審神者に駆け寄った。
 大丈夫か、と長義が声をかけるより先に、彼女は顔を上げた。疲れたように笑みを浮かべ、長義を見上げる。その顔を見て、息を飲む。彼女の目元にはうっすらと隈ができていた。
 長義が何か言おうと口を開いたとき、歌仙が労るように審神者に声をかけた。
「お疲れさま主。これから急ぎで着物を仕上げるから、きみは休んでおいで。前日までには間に合わせるよ」
 長義は思わず眉をひそめた。
 彼女は頷き立ち上がり、ぺこりと頭を下げると部屋を出て行こうとする。長義はその背中を追いかけた。
 廊下に出ると、長義は彼女の腕をつかんだ。彼女は振り返り、不思議そうに首をかしげた。
「どうかしました?」
「……新しく着物を仕立てるなんて、一体なにがあるのかな」
 嫌な予感がする。長義が尋ねると、審神者は目をぱちぱちと瞬かせた後、「言っていませんでしたか」とつぶやいた。
「お見合いに行くんですよ」
 長義は顔をしかめた。

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