山姥切国広は酔うとキス魔になる。初めて知ったときは驚いたものだが、最近では慣れてしまって、特に気にしなくなっていた。
今日も彼は飲みすぎたようだ。酒のにおいを漂わせ、顔を赤らめ、焦点が合っていないかのようなぼんやりとした眼差しで、私に口づけてくる。頬に、額に、瞼の上に、鼻先に、唇に、首筋に、何度も口づけを落としていく。
「酒は飲んでも飲まれるな、ですよ。ペースを考えて飲まないと」
そう注意を促せば、彼はふっと微笑んで、私の唇に口づけてきた。まったく人の話を聞いていない。これだから酔っぱらいは困るのだ。
「もう……。ほかの皆にも同じようにキスして回っているんですか? 皆きっと困ってしまいますよ」
「んー……」
聞いているのかいないのか、彼は生返事をするだけで、また口付けをしてくる。
「聞いていませんね? 困った方ですね……んっ……」
再び口付けられる。今度は舌まで入れられてしまい、呼吸が苦しくなる。彼の胸を押して離れようとしても、びくともしない。それどころか、彼はますます強く抱きしめてきて、より深く口付けようとしてきた。
「こ、こら……! だめですよ!」
さすがにこれ以上はまずいと彼の肩を強く押すと、意外とあっさりと離れて、私はほっと息をつく。
「こんな風になってしまいますから、これからはお酒の席で飲みすぎないように。いいですね? ……もう、聞いていますか、山姥切くん」
「ん……」
はあ、とため息をつき、隣に座っていた男の膝を叩く。
「ほら、立ってください。もうそろそろ部屋に戻らないといけません」
「ん……まだ眠たくない」
「今にも寝そうな人が何を言っているんですか。ほら、がんばって布団まで行きましょう」
その声掛けも虚しく、彼はそのまま倒れ込むように私の膝に頭を乗せ、すやすやと眠り始めた。
初出:2022/01/19
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