長義さにつめ #2 - 4/6

 グラビア雑誌

 風呂上がり、自室に戻るべく長義が廊下を歩いていると、近くの大部屋からにぎやかな話し声が聞こえてきた。何とはなしに中を覗くと数振りの仲間たちが車座になって何かを囲んでいる。彼らの中心には本のようなものが置いてあった。ページをめくっては、やれ細すぎるだの胸が小さいだの、あっちの方が大きいなどと言い合っている。
 もう夜だというのに寄って集まって一体何を見ているのか。一つ注意してやろうと近寄ってみたことを長義はすぐに後悔した。仲間たちの真ん中に鎮座していたもの、それは成人向けの雑誌だった。表紙には胸を強調した女性が挑発的なポーズを取っている。下品な煽り文句が躍っていた。
「何をしているのかと思えば……まったくお前たちときたら」
 呆れたようにため息をつく長義に彼らは一斉に振り返る。
「あっ、長義じゃん! なあ、これ見てみろよ!」そう言って獅子王が開いたページを見て長義の顔が引きつった。そこには水着姿の女性が写っていて、その豊満な肉体を見せつけるようにポーズをとっている。
「その女がどうかしたか?」
 長義が尋ねると、仲間の一人が言う。
「この女の体、すげーエロくね!?」
 別の一人がそれに同意する。
「ああ、これはすごい。実に素晴らしい」
 長義は頭を抱えた。そんな長義の様子に気づかずに彼らはやいのやいのと盛り上がる。
「やっぱり巨乳は正義だと思うんだよ」
「そうだなあ。手のひらからこぼれるたわわに実った果実……」
「俺、貧乳派だけど、この胸はちょっと揉んでみたいかも」
「わかる。触ってみたいな」
 ページをめくっては、この女の子がタイプだの、あの子は好みじゃないだのいろいろ言っている彼らを止めるべきか否か。迷っている長義に、鶴丸が楽しそうに声をあげた。
「きみの好みを当ててやろう。そうだな……彼女はどうだい? なかなかかわいいじゃないか」
 とあるページを開いてこちらに見せてくる。そこにあったのは乱れた浴衣姿で妖艶に微笑む女性の姿があった。どことなく審神者と雰囲気が似ている気がする。
 長義はその写真の女性を見つめて、それから言った。
「……まあ、悪くはないんじゃないか」
 その言葉に、彼らは歓声をあげる。
「おお〜いいねいいねぇ」
「じゃあ次はこいつなんてどうだ?」
 鶴丸はまた別のページを開いた。そこに写るのは、裸に布団だけという格好で寝転ぶ女性の写真。彼女もまた目元がどこか審神者に似ていた。写真をじっと見つめる長義の様子を仲間達が期待を込めたまなざしで見つめていた。やがて長義が口を開く。
「……まあ悪くないんじゃないかな」
 その答えに皆一様にがっかりした表情を浮かべる。
「ええ〜」
「長義、他に感想はないのかよ」
 ブーイングを浴びて、長義が眉間にシワを寄せて言う。
「そう言われてもね……そもそも俺はこういうことはよくわからないんだ。もう失礼するよ。お前たちも明日に支障が出ないように早く寝ることだね」
 立ち去ろうとする長義の腕を誰かがつかんだ。振り返ると、先ほどまで他の者たちと盛り上がっていたはずの獅子王と目が合う。
「なあ、長義って主のこと好きなんだろ?」
 その言葉に長義は思わず固まった。誰にも言ったことはないし、態度に出ないように気をつけていたというのになぜ気づかれたのか。苦虫を噛み潰したような顔になった長義にかまわず、獅子王はにっこり笑う。
「俺、応援してるからさ」
「……何のことだか」
 平静を装ってそう返した。だが獅子王の笑顔は崩れない。
「またまたぁ」
 長義は内心舌打ちをした。彼には全て見透かされているようだ。平安太刀は侮れない。
「頑張れよ!」と背中を力いっぱい叩かれて、長義は痛いと文句を言いながらその場を離れた。

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