髪を乾かす
霊力が低いと判断された彼女は、髪に霊力が宿るという言葉を信じて髪を伸ばしている。そんなわけで彼女の髪は長かった。だが、彼女は面倒くさがりだった。せっかくの艶髪なのに手入れをせず、入浴後はそのまま自然乾燥させることが多い。髪が乾ききる前に床につくこともままあった。
そんな審神者に苦言を呈したのが、初期刀である山姥切国広だった。彼は審神者の濡れた長い黒髪を手に取り、タオルで水気を拭き取った。慎重にドライヤーで温風を当て、丁寧に櫛で髪を梳いていく。
「まさかあなたに注意されるとは思いませんでしたよ」
苦笑いを浮かべて戸惑う審神者だったが、その瞳は気持ちよさそうに細くなっている。眠くなってきたのか、うつらうつらと船を漕ぐ彼女に山姥切は言った。
「あんたが寝てしまうと俺は困る」
「あ、すみません……」
目をぱちぱちと瞬かせる。その拍子に目尻に浮かんでいた涙がこぼれ落ちた。
「あっ……これは生理的な涙ですね。見苦しいものを見せました」
照れたように笑う審神者の頭を山姥切国広は撫でる。
「別に見苦しくない。あんたはもっと休んだほうがいいな」
彼の手のひらは固かった。けれどもとても優しかった。この本丸の初期刀で、真面目で責任感の強い青年のものだった。
しばらくの間、山姥切は彼女の頭を撫でていたが、そこがほんのりと湿っていることに気づいて作業を再開した。審神者は何度も瞬きをして眠気に堪えた。