「今日のおやつだそうですよ」
どうぞと手渡されたそれをまじまじと見つめる。黄色くてつややかな皮に包まれたそれはずっしりと重く、そして甘い香りを放っていた。この見た目と匂いには覚えがある。
「バナナか」
「はい、バナナですね」
主はにこりと微笑むと俺の隣に座り、彼女もバナナを一房手に取った。皮を剥き、横髪を耳に掛ける。その仕草が妙に艶めかしくて目が離せない。
「食べないんですか?」
「え、あ……食べる」
促されるまま手に持たされたバナナの皮を剥いて、口に運ぶ。柔らかくて甘くておいしい。確かにこれは美味いなと思いながらも、別のことを考えてしまう自分がいる。横目で主をうかがうと今まさに口を開けてバナナを頬張ろうとしていて――。
「……食べますか?」
「いや、別にそういうわけでは……。すまない」
白い果肉の先を差し出され、慌てて首を横に振る。少し気まずくなりつつももう一本バナナを手に取って皮を剥いていると、隣からも同じようにバナナを食べる音が聞こえてきた。ちらと見れば、主が自分のものよりも一回り大きなそれを食べようとしているところだった。
口を大きく開いて齧りつこうとしているのを見て、意外に大きな一口だと気づく。あの口で……と考えてしまって慌てて頭を振る。
何を考えているんだ俺は!?
ぶんぶんと首を振り続けているうちにバナナはどんどん小さくなっていき、やがてなくなった。残った皮を主が丁寧に畳んでゴミ箱に入れる様子を眺めていると、不意に声をかけられる。
「山姥切くん」
「なんだ?」
「よかったら、こちらもどうぞ」
箱から菓子の包みを取り出し、差し出された。「おまんじゅうですよ」と彼女は言った。とりあえず受け取るが、なぜ差し出されたのかわからない。手のひらの上のまんじゅうに視線を落としていると、主は首を傾げた。
「……違いましたか? なんだかまだ足りなそうな顔をしているような気がしたのですけど」
「そんなことは……あるかもしれない」
正直に言えば、「やっぱり!」と笑われた。そのまま「お茶でも淹れましょうか」と席を立とうとする彼女に待ったをかける。
「もうひとつだけもらってもいいだろうか」
「もちろんですとも」
再びまんじゅうを手渡された。中身を口に放り込めば、甘みがじんわり広がった。