おねだり
文机の上の端末に向かって、カタカタとキーボードをたたいていた審神者の背に重みがかかる。肩越しに振り向けば、そこには金色の髪。
審神者がしっかり振り返るより先に、山姥切国広はその細い腰に腕を回してぎゅうと抱きしめた。ちらりと山姥切を一瞥すると、すぐにまた目の前の画面に向き直る。
「…………なあ、主」
どこか甘えたような口調で彼は声をあげた。
「どうしたんですか?」
静かな部屋には端末の稼働音とキーボードを打つ音だけが響いている。画面から目を離すことなく、審神者は返事をした。その声にかぶせるようにして、背後から声がかけられる。
「……なあ主」
背後から伸し掛かられるようにして抱きつかれた審神者のからだは、山姥切の腕の中にすっぽりと収まった。背中から伝わる体温が温かい。審神者の首筋に彼の頭がすり寄せられる。吐息がくすぐったかった。
「今日はどうしたんですか? なにかあったんですか?」
しかし何度尋ねても山姥切からの返答はない。観念した審神者は、仕方なく彼の方を見た。山姥切は満足げに笑い、そっと顔を近づけた。