姥さにつめ #2 - 8/11

壁ドン
 

 壁に追い詰められる。逃げ場はない。ちらりと横に視線を向けると、顔の両脇には彼の手があった。いわゆる、これは世に言う、俗に言う、あれですよね? 私は今、少女漫画みたいなことを体験しているんですよね? ドキドキしながら目の前の顔を見る。端正な顔立ちに目が奪われた。
――どうしよう。
 審神者はパニックになっていた。心臓がばくばくと大きな音を立てて動いている。顔が熱くて、頬が赤く染まっているだろうことがわかる。顔が近い。息がかかるくらいの距離に彼の綺麗な顔がある。こんなに美しいものを見たことがない。この人はなんてきれいなんだろう。そんな言葉ばかりが頭に浮かんだ。
 前を見ていられなくなって、ぎゅっと目をつむったときだった。
「こっちを見てくれ」
 低い声で囁かれ、反射的に目を開いた。
「……っ!」
 視界いっぱいに山姥切の顔が広がる。金色の髪に青みがかった不思議な色の瞳。そのすべてが美しくて、思わず見惚れてしまう。ふっと彼が笑った気がした。同時にゆっくりと山姥切の顔が近づいてくる。審神者は動けなかった。彼の唇が自分のそれと重なるのをただ呆然と見ていた。
 ちゅ、と小さな音を立てながら何度か唇を重ねる。角度を変えて、何度も何度も啄むように口づけられた。やがて山姥切はゆっくりと顔を離すと、審神者の顎を掴んで、上を向かせた。再び二人の視線が交わる。
 山姥切はじっと審神者を見つめながら言った。
「俺のものになってくれ」

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