姥さにつめ #3 - 2/7

真夏日

 

 太陽の光が燦々と降り注ぐ庭先をぼんやりと眺める。じりじりとした暑気が体に纏わりついていた。何かに急き立てられるように鳴く蝉の声が鼓膜を打つ。額から汗がぽたりと落ちた。
 ふと背後に誰かの気配を感じて振り返る。そこには盆を両手に抱えた山姥切国広が立っていた。白い布を目深に被った彼(暑くないのだろうか?)は無言でじっとこちらを見つめている。私はそれに気づくと慌てて立ち上がった。
「すみません、気づかなくて」
 すると彼は小さく首を振り、盆を私の眼の前に突きだした。カラコロ、と軽やかな音がする。視線を向ければ、硝子製のコップの中で氷と麦茶が揺れていた。どうやらわざわざ用意してくれたようだ。
「無自覚のうちに脱水症状を引き起こすことがあるらしい」
 そんな言葉を口にして、コップを差し出して来る。礼を述べながら受け取り、口を付けた。ひんやりと冷たい。一気に喉へ流し込めば火照った体が少し楽になったような気がする。
「冷たくておいしいです」
「…………そうか」
 彼は短くそう言うと用は終わったとばかりに踵を返す。布が翻り、ふわりと風が舞った。外では相変わらず蝉が大合唱を続けている。私はそれに耳を傾けながらゆっくりと麦茶を飲み干した。

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