姥さにつめ #3 - 7/7

胸に触れる

 

 寝顔を晒す主の姿が珍しくて、そっと手を伸ばした。起こさないように静かに指先を触れさせる。柔らかく温かい彼女の身体。
 こんなにも近くに存在する。この温もりも吐息の音すらも全てが俺だけのものだという事実は幸福で満たされると同時にどこか恐ろしくもある。いつか彼女は俺の手の中から消えてしまうのではないか。そんな恐怖があった。
(ちゃんと生きているよな……?)
 確認するように彼女の胸に手を置いた。トクントクンという心臓の鼓動を感じる。ああ、ここにいるんだと思った。そう思ったら無性に触れたくなった。顔を寄せ、軽く口づけをする。柔らかい感触がした。
「ん……、くすぐったいですよ」
 ふふっと笑う彼女を見て胸の奥がきゅっと苦しくなる。
「すみません、起きますね」
 身を起こす彼女を腕の中に引き寄せた。柔らかさとぬくもりを堪能する。彼女の匂いに包まれた。
「…………? どうしたんですか?」
 不思議そうな表情で見つめてくる彼女に対して笑みを浮かべて言う。
「なんでもない。……ただ、もう少しこのまま」
 そう言えば彼女は大人しくされるがままになっている。
 ――ずっと、こうしていたい。
 なんて、口にしたらきっと呆れられるのだろうけれど。彼女の温もりを、柔さを確かめながら、ゆっくりと目を閉じる。やがて規則正しい寝息が聞こえてきて俺の意識は微睡んでいく。
 幸せな夢を見た気がした。

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