雨が降っていた。ざあざあと降りしきる雨音を聞きながら、審神者は畳の上に寝転び、何をするでもなく窓の外をぼんやりと眺めていた。軒からぽたぽたと落ちる雫を数えて暇をつぶしていた。
「ひゃくいち、ひゃくに、ひゃくさん、ひゃくし、ひゃくご、ひゃくろく、ひゃくなな……」
「なにをしているのかな」
突然、視界に逆さまの長義の顔が現れた。「わあっ」と思わず声を上げれば、「驚かせてすまなかった」と謝罪された。
「いえ……大丈夫です。おかえりなさい」
そういえば長期遠征に行っていた部隊が帰ってくる時間だった。居住まいを正そうと体を起こして向き直る。
長義は小さく笑って、遠征結果の報告書を手渡してきた。それを受け取り、改めて「お疲れさまでした」と審神者が労えば、彼は満足そうに「ああ」と短く答えた。
「で? きみはなにをしていたのかな」
「ええと、暇つぶしに落ちてくる水滴を数えていました……すみません、あなたたちは遠征に出ていたというのに」
怠惰な時間を過ごしていたことが恥ずかしく、身を縮めて謝った。長義は口許を緩めて「構わないよ」と言いながら、審神者の頬を優しく撫でて、それから唇に軽く触れてきた。
「きみが暇を持て余していたのなら、俺にとっては好都合だ」
「……?」
「俺が帰ってきたのだから、俺のことだけを考えていればいい」
唇に触れていた指が離れ、代わりに彼の手が審神者の首筋をなぞった。その感触がくすぐったくて思わず肩をすくめると、長義はくすりと笑った。
「俺は今から風呂に入るけれど、主はもう入ったのか」
「はい。さきほど入ってきました」
「では、俺の部屋で待っていてくれるかな」
「はい。わかりまし……ん!?」
「いい子だ」
審神者の返事を聞くと、彼は上機嫌で部屋を出ていった。