長義さにつめ #3 - 7/8

お手

 

 目の前には微笑みを浮かべる山姥切長義の姿がある。審神者の腕を取り、引き寄せたかと思うとそのまま膝の上に座らせた。彼は美しい笑みを口元にたたえたまま優しく審神者を見つめ、喉をくすぐるように指を動かしてくる。まるで愛玩動物を可愛がるような扱いを受けて、審神者は少しだけ困惑気味に眉尻を下げた。
「私、猫ではありませんよ」
 思わず口から抗議の声が漏れる。長義は穏やかな表情のまま、「知っているとも」と答えた。彼は右手で審神者の頭を撫でながら、「きみはどちらかというと犬だよね」と楽しげな調子で言う。からかわれているのかと思ったものの、長義は相変わらず優しい眼差しでこちらを見ているだけだ。審神者は反論を諦め、彼にされるがままになっていた。
「主は可愛いね。素直でとてもいい子だ」
 子どもに言い聞かせるような言い方で褒められると途端に落ち着かない気持ちになってくる。彼の視線は慈しみに満ちていて居心地が悪い。けれども、恥ずかしくとも嬉しいと思ってしまう自分がいるのだ。
 審神者が口を閉じて黙り込むと長義はほんの微かに目を細めた。そしてゆっくりと唇を重ねてくる。触れ合った場所は温かく、柔らかだった。吐息が混じり合うほどの距離で彼が囁く。
「好きだよ、俺の主」
 手のひらを上に向けて、片手が差し出された。意図が掴めずに首を傾げていると、催促するようにちょんちょんと指先で手をつつかれる。彼の言いたいことがわかった気がして、おずおずと彼の手に自分の手を乗せれば、「いい子」とまた褒められてしまった。
 指を絡められた。手を繋ぐと互いの体温が溶け合い、境目が曖昧になるようだった。改めて彼を見れば、普段よりも機嫌の良さそうな笑顔が目に入ってきて何やら照れ臭くなる。気まずさを覚えて俯いていると頭上からくすりと笑い声が落ちてきた。

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