クリスマスの話 - 2/5

 もうすぐクリスマス

 

 戦時とはいえクリスマスが近づき、審神者界隈もにわかに色めき立っていた。本丸内でもどこか浮ついた空気が流れている。私は手元のチラシに視線を落とした。政府からの配布物に混ざっていたそれには、万屋街に関するお知らせが載っていた。
『今年もやってきました! クリスマスマーケット開催のお知らせ』
 そんな見出しが躍るチラシには、赤や緑で彩られた万屋街の様子が写されている。屋台がたくさん並んでおり、まるで縁日のような賑わいだ。
 クリスマスまでの一週間、万屋街ではヨーロッパの伝統的な行事である『クリスマスマーケット』が広場で開かれるらしい。シュトレンやクーヘン、ヴルストなど本場ドイツ仕込みの料理にツリーに飾るオーナメント、手袋やマフラーといった雑貨などが売られるようだ。
 戦に役に立ちそうなものはないが、見ているだけで楽しめそうだ。今年は街の飾りにもかなり力を入れているようで、夜には街中がイルミネーションに包まれるという。
 昨年は結局行けなかったが、足を運んだ刀剣男士からのお土産話を聞く限りなかなか楽しい催し物だったらしい。「あるじさんも一緒だったらもっと楽しかったと思うのに」「街がきらきらしていて素敵でした」そんな風に聞かされて、今年はぜひ行きたいと考えていた。

 チラシをまじまじと見ていると、「何を熱心に見つめているんだ?」後ろから声をかけられた。振り返ると山姥切国広がいた。彼は私の手元を覗き込むと「万屋街の知らせか」と言った。
「はい。今年もクリスマスマーケットが開かれるそうで、行ってみたいなあと」
「俺もあんたが行くならついていきたい」
 山姥切くんはそう言うと私の隣に腰を下ろした。チラシに載っている写真の一つを指差して「このバックカルトッフェルとはなんだ?」と聞いてきた。
「ベイクドポテト……焼いたじゃがいもですね。バターやチーズを上に乗せて食べるみたいですよ。おいしそうですね」
「これはなんだ? 主」
 彼が指したのはアイシングで模様が描かれたクッキーの写真だった。星だったり人だったり形もさまざまだ。ドイツではシュトレンと並ぶ定番のお菓子のようだ。
「レープクーヘンという香辛料の入ったクッキーです。この写真のものはかわいいですね」
「主はこういうのが好きなのか?」
「えっと、はい、好きですよ」
「そうか。覚えておこう」
 そう言った彼は、まるで宝物を見つけた子どものように嬉しそうに笑った。

 

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