12月24日。夜になり、本丸のクリスマスパーティーも終盤にさしかかっている。ケーキを食べ終えた審神者は、一部の刀たちとともにそっと会場をあとにした。これから残った刀たちで二次会と称した酒盛りが行われるのだ。審神者も誘われたが、仲間内だけで楽しむ方がいいだろうと思い辞退した。
静かな廊下を通り過ぎ、自室へと戻る。時計の針の位置を確かめれば、まだ日付が変わるまでには少し時間があった。
(今日は楽しかったなぁ)
賑やかな宴の様子を思い出しながら、審神者は静かに微笑んだ。いつもより豪華な料理に、普段はあまり飲まないシャンパンやワインなども振る舞われたおかげで、皆とても上機嫌だった。刀たちの中にはサンタ帽を被ったり、トナカイのカチューシャを頭につけたり、雪だるまやサンタクロースの衣装を身につけるものもいた。
(みんな楽しそうだったな)
審神者はふぅ、と息をつくと文机の前に座り、書類仕事を始めた。提出期限が迫っている報告書が数件あるためだ。それらを手早く片付けていく。
しばらく集中して作業していたところで、コンコン、と控えめに柱が叩かれる音が聞こえてきた。審神者は顔を上げて眼鏡の位置を直すと、扉の方へ視線を向ける。
「どうぞ」
入室を許可する声をかければ、ゆっくりと襖が開かれた。
「……失礼する」
「山姥切さん……? どうされたんですか?」
立ち上がり、入り口に立つ彼の方へと向かう。山姥切は部屋に入ると後ろ手で閉めた。そして、そのままその場に佇んでいる。
「何かご用ですか?」
審神者が首を傾げつつ尋ねれば、彼はようやく口を開いた。
「……その、これを渡しに来たんだが……」
おずおずと差し出してきたのは一つの包みだった。両手に収まるほどのサイズのそれは丁寧にラッピングされており、リボンがかけられている。
「これは……?」
「……クリスマスプレゼントだ。受け取ってほしい」
「えっ! わ、私に……!? どうして……?」
突然のことに目を丸くしながら問いかける審神者に、山姥切は困ったように眉尻を下げた。
「写しからの贈り物など迷惑かもしれないが……」
「そんなことありません!」
慌てて否定すれば、彼はほっとした表情を見せた。
「よかった」
「あ、ありがとうございます……」
受け取った箱を手に、まじまじと眺めてみる。赤い包装紙で包まれており、金色のシールが貼られていた。
「開けてもいいですか?」
「ああ」
許可を得てから、審神者はそっと包みを解いていった。中に入っていたのは温かそうなマフラーだった。白い生地に紺色のチェック柄が入っているシンプルなデザインだが、一目見て質の良いものだとわかる。触ってみると肌触りもいい。
「その……以前、あんたのマフラーを汚して駄目にしてしまったことがあったろう……」
そう言われて、審神者になったばかりの寒い冬の日のことを思い出した。
あの日、初めて出陣した山姥切が大怪我して帰ってきたことに狼狽えた審神者は、思わず首に巻いていた自分のマフラーで止血をしたのだった。そのときのことを彼は気にしてくれていたらしい。
そういえば、あのマフラーはどこへやったのだったか、と考えていると山姥切が続けて言った。
「その代わりというわけではないのだが……。気に入らないようなら捨ててくれても構わないから……」
自信なさそうに言う彼に、審神者はぶんぶんとかぶりを振る。
「とんでもないです! ……すごく嬉しいですよ。大切に使わせてもらいますね」
嬉しさを伝えようと笑みを浮かべると、彼も安心したのか頬を緩ませてくれた。
早速身につけてみれば、温かくてとても心地いい。自分らしくなく浮かれながら審神者は声をあげる。
「どうでしょうか? 似合っていますか?」
「……ああ、よく似合っている」
頭から被った布を引き下げながら、山姥切は顔を背けた。