審神者が本丸に滞在する週末、本丸でたこパ――たこ焼きパーティーが開催された。
主催は鶴丸国永である。なんだか無性に食べたくなったのだ、と審神者と山姥切を見ながら説明した彼は「じゃじゃん!」と自ら効果音を発しながら、テーブルの下から何かを取り出して審神者に差し出した。それは大きな平たい箱だった。パッケージには見覚えのあるたこ焼き器の写真が印刷されている。
「これ、どうしたのですか?」
驚いて尋ねる審神者に鶴丸はにんまりと笑いながら答えた。
「きみからもらっている給料で買ってきたんだ。我ながらいい買い物をしたぜ」
そう言って満足げに笑うと、鶴丸はテーブルを囲む仲間の顔をぐるりと見渡して声を張り上げた。
「そういうわけで、たこパしようぜ! どんどん焼くぞー!」
皆が歓声を上げて手を叩く。審神者も隣に座る山姥切と顔を見合わせて微笑み合った。
鶴丸はすでに厨番たちに話をつけていたらしく、すぐに材料が広間に運ばれてきた。生地は二種類あるようで、一つ目がだしの入ったもの。二つ目はホットケーキミックスを使用したものだ。中に入れる具もかなり豊富だ。ごく一般的なたこ焼きに使用されるネギ、紅ショウガ、天かす、タコはもちろんのこと、エビ、イカ、ソーセージ、チーズ、明太子、キムチ、納豆、ベーコン、ハム、などなど。チョコレートやキャラメルといった変わり種まであった。たこ焼きにかけるタレも各種用意されている。さすが驚き好きの鶴丸が主催だけあって用意周到なことだ、と審神者は感嘆した。
「ちなみに小さいサイズのたこ焼き器もある。これも使おう」
「じゃあ、そっちでお菓子系のものを作ろうよ」
乱の提案に堀川が「そうだね」と同意を示す。そんなわけで主に二つのグループにわかれて、たこ焼きを焼くことになった。
審神者はスタンダードなたこ焼きを作る組に入ることになった。早速電源を入れてたこ焼き器を温める。表面に油を塗り、生地を流し込む。いい音が響くのを耳にしながら、それぞれの穴にタコを一粒ずつ入れ、紅ショウガとネギ、天かすを全体に散らしていく。
「あるじさま、よろしくおねがいします!」
今剣からたこ焼きピックを手渡され審神者は上手にできるか不安に思いながら、焼けてきた生地をピックで切り分け、ひっくり返すタイミングを計る。
「そろそろでしょうか?」
審神者の手元を見守る秋田がわくわくとした様子で尋ねた。「そうですね」ホットプレートを見つめながら、慎重にピックを穴に差し込み、ふちに沿わせるように回転させる。
「あら……」
生地がふちからはみ出てしまった。形も少々いびつだ。失敗したかと思われたが、「大丈夫ですよ」と横から声がしたかと思えば、ピックを片手に持った堀川が形をきれいに整えて返してくれた。
「さすが堀川くんですね」
「主さんも十分上手ですよ」
そう言って彼は笑い、ピックを隣にいた山姥切に手渡した。「ほら、兄弟もやってみなよ」
山姥切が戸惑いながら受け取ると、彼は無言で審神者を見た後、同じように生地を切り分けてピックを穴に差し込んだ。そのままくるりとひっくり返せば綺麗な円形のたこ焼きが出来上がった。
「山姥切くん、すごいです! 上手です!」
思わず審神者が拍手をすれば、山姥切は照れたような表情を浮かべて布を引っ張った。そうして、隣にいた秋田にピックを押し付けた。審神者は焼きすぎないうちにすべてをひっくり返してから、すぐ横でにこにこしている今剣にバトンタッチした。
準備を整え、次はなんの具にするか相談していると、隣のテーブルから大きな歓声があがった。誘われるように視線を向ければ、目にも留まらぬ速さで次々とたこ焼きが焼かれていくのが見えた。プレートの前にいたのは今回の言い出しっぺである鶴丸だった。彼の手さばきは見事なものだった。あっという間に作り上げては皿の上に盛り付けていく。穴からたこ焼きがなくなるやいなや、彼の両サイドで控える薬研と青江が次の準備していく。その連携プレイも見事で、審神者はぱちぱちと両手をたたき称賛を送った。
鶴丸が楽しげに笑いながら振り返った。
「さあ、次はどんな具材を入れようか?」