伊達巻
廊下を歩いていたところ、「主~!」と呼ばれた気がして振り向いた。だが、そこには誰の姿もない。きょとんとしていると、隣にいた近侍の小夜左文字が袖を引いて、「あっちだよ」と示す。その先にあった障子が開け放たれた部屋には、茶色いシーツの布団にくるくると巻かれた刀剣男士の姿があった。
「……み、みなさん……一体なにをしているんですか……?」
部屋には四つの布団が並んでいた。巻かれた先端からそれぞれ顔がのぞいている。鶴丸国永と太鼓鐘貞宗は朗らかに笑っているが、燭台切光忠は恥ずかしそうに顔を赤らめ、大倶利伽羅はそっぽを向いていた。かなり不本意そうである。よく見ると彼の布団だけ浴衣用の帯で縛られていた。
「えっと、海苔巻でしょうか?」
戸惑いながらさらに尋ねれば、鶴丸が楽しげに答えてくれた。
「主、惜しいな。海苔巻じゃない、俺たちは伊達巻だ!」
おせち料理の定番だ、と彼は得意げに声をあげる。
「……お正月になるとよく見かけますよね」
「ああ、甘くて美味しいぜ」
小夜と太鼓鐘が同意した。審神者も確かに、と頷き返す。
「もうじきお正月ですからね。伊達巻もたくさん用意しましょうね」と言えば、彼らは嬉しげに目を輝かせた。
「それは重畳。今年も楽しみにしているよ」
「ところで、いつまでそうしているんですか?」
首をかしげてみせれば、鶴丸は布団に巻かれたまま「飽きるまで」と笑い、ころころと隣の太鼓鐘の方へ転がっていった。