ひねもすのたり #3 - 6/6

雪だるま

 

 一段と冷え込んだ日の翌朝、いやに眩しいと思いながら庭を見れば、一面の銀世界が広がっていた。昨晩の内に降っていたらしい。空は青く晴れ渡っていて、白い雪が光を反射してきらめいていた。
 和泉守が目を細めて外を眺めれば、すでに短刀たちが数人集まっているのが見えた。どうやら皆、朝早くから外で遊ぼうとしているらしい。元気なもんだと苦笑しながら、彼は布団を片付けて身支度を整えたのち、自室を出た。廊下に出てみれば、やはり寒い。ぶるりと身を震わせながら歩いていると、縁側で巨大な影に遭遇した。
「うおっ!?」
 つい驚きの声を上げてしまった。和泉守の目線の先には大きな雪玉があった。その傍らには雪かき用のスコップが置いてあった。どうやら誰かが作ったもののようだが、なんとも大きい。岩融か御手杵か、その辺りの高身長の刀が作ったものだろうか。そんなことを考えながら、冷えた縁側を歩き、雪だるまの前を通り過ぎる。すると、その隣にも小さな雪だるまがあった。それは点々と続き、庭の端まで続いているようだった。
「……これはまた随分と作ったな」
 朝早くからよくやるぜ。呆れながら通り過ぎようとしたとき、白い雪玉の影から鶴丸がひょこりと姿を現した。首には白いマフラー、手には白い手袋。全身が真っ白で保護色になっている。
「よう、おはようさん」
 防寒対策はばっちりの様子の鶴丸は朗らかな笑みを浮かべ、スコップ片手に和泉守を出迎えた。
「どうだ! 驚いたか?」
「まあ、それなりにはな。あんたが一人で作ったのか?」
「さすがにこの短時間では無理だなあ。短刀や脇差連中と協力して作ってみたのさ。これなら主が本丸に帰ってきたときに、良い驚きを提供できるだろう?」
 そう言いながら、鶴丸は楽しげに笑った。
「暇だってのもあるがな。飯は食ったし、やることもない。庭には一面の雪。こりゃ雪だるまを作るしかないってわけだ」
 雪を集めて玉にし、それを転がして大きくしていく。その様子を和泉守は興味深く見守りながら、時折口を挟んでいた。
「そういえば、和泉守」
「なんだよ」
「朝飯は食べなくていいのかい?」
 問われて、和泉守ははっとする。食堂へ朝食の握り飯をもらいに行く途中だったことを思い出したのだ。こんな寒い場所で喋っている場合ではない。
「今日の具はなんだった?」
「梅干しと昆布。驚きはなかったな。おいしかったが」
「握り飯にどんな驚きを期待するんだ」
「まあ、なんだ。いろいろあるだろう。たとえば……」
 作業の手を止めずに鶴丸は言葉を続ける。和泉守はそれを「いい、いい」と遮り、苦笑した。
「俺はもう行くぜ。じゃあな」
 新たな雪だるまが誕生するのを見届けると、和泉守は食堂へ急いだ。

 

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