通りかかった部屋の畳の上で、秋田藤四郎が横になって眠っていた。すうすうと気持ちよさそうな寝息が聞こえてくる。
夏の日差しが照りつける外は勝手に汗が出てくるほど暑いが、この場所は日陰だった。昼寝にぴったりである。風とおりもいいようで、さわやかな風が脇を通り抜けていく。縁側に立つ審神者の髪の毛がさやさやと揺れた。
(疲れちゃったかな?)
今日、彼は馬当番だったはずだ。暑い中の作業は大変だったろう。秋田の健やかな寝顔を見下ろし、瞳をゆるませる。
(……でも、このままはよくないよね)
暑い夏とはいえ、吹きさらしの中での昼寝は風邪を引きかねない。実際に刀剣男士が風邪を引くかどうかは知らないが、放っておくことは躊躇われた。審神者は一人頷き、彼に掛けるものを用意するべく踵を返した。
審神者がタオルケットを手にして戻ると、山姥切国広と鉢合わせた。彼も眠る秋田の姿に目をとめたのだろう。山姥切の手にもタオルケットが抱えられていた。彼は審神者の手元に視線をやるや、気まずそうな顔をし、頭から被る布を片手で押し下げた。
山姥切は周りにはあまり興味がないふりをするが、そのじつ周りをよく見ている。ほっとけなかったんだろうなと思いながら、審神者は彼の手元を見つめた。
(でも、どうしようかな……)
お互いがお互いの手にある布を見つめている状態だった。眠っている秋田が起きてはいけないと思うと下手に何か言うことも憚られた。というより、なにを話せばいいのかわからなかった。奇遇ですねとでもいえばいいのか。
そんなことを考えていると秋田がもぞもぞと寝返りを打ち、ふと瞳を開けた。体を起こし、欠伸をこぼした彼は少しぼんやりした様子だった。
「あ……」
目が合う。秋田は審神者と山姥切の顔を交互に見やり、ひとり得心したように手をぽんとたたいた。
「主君と山姥切さんも休憩ですか? 鶴丸さんから教えてもらったんですけど、ここは涼しくてお昼寝に最適ですよ!」
立ち上がった秋田に「どうぞ」となぜか場所を譲られる。
「おふたりとも、ゆっくり休んでくださいね」
にこにこと可愛らしいほほ笑みを浮かべ、秋田は一礼して部屋を出ていった。
あっという間のできごとだった。
残された審神者は山姥切と顔を見合わせて、無用となってしまったタオルケットに視線を落とした。この状況、どうするのが正解か。顔をあげて、縁側に立ち尽くす山姥切を再び見る。
「……休みます?」
「……休むか?」
そして、同じタイミングで同じ言葉を口にした。
たぶん言ってみただけで、ふたりとも休まない。
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2021/08/26
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