☆おまけ3(小話)
※本編より前の話
審神者宛の文が届いた。【重要】と書かれているので直接渡したほうがいいと思い、山姥切国広は審神者を探して本丸内を歩き回る。
すると、庭の隅のほうで木に背を預けた審神者の姿を発見した。彼女の膝には五虎退の子虎が乗っていたらしい。山姥切の気配に気づいたのか、小さく鳴き声をあげると、屋敷の方へ去っていった。
日当たりがよいその場所は、木漏れ日がきらきらと降り注いでいて、とても心地よさそうだ。山姥切は眩しそうに目を細めながら、ゆっくりと歩みを進める。
審神者は目を閉じて眠っていた。すうすうと規則正しい寝息が聞こえてくる。
(…………綺麗だ)
山姥切は思わずそう思った。
彼女の髪が風に揺れるたびに、光に反射してきらきらと輝く。まるで光の粒をまとっているようだ。
風に乗って、ふわりと良い香りが漂ってきた。それは甘く優しい花の匂いだった。山姥切は誘われるように顔を近づけると、そっと唇を落とした。そして、ふと我に返り、慌てて距離をとる。
しばらくじっとしていた彼女だったが、やがて瞼が震えたかと思うと、ゆっくりと開かれた。ぼんやりとした瞳が山姥切の姿を捉える。
山姥切が固まっていると、審神者は何も知らない様子でいつもの穏やかな笑みを浮かべた。
「……あんまり気持ちよくて、うっかり眠ってしまいました。ここは五虎退くんのおすすめスポットなんだそうです」
審神者が体を起こす。彼女は人差し指で顔を掻きながら、恥ずかしそうに頬を染めた。
山姥切は動揺を押し隠すように、努めて冷静な声で探していた理由告げて、預かっていた手紙を手渡した。
これは山姥切国広が恋を自覚する、だいぶ前の話である。