「こんな変なやつらに負けるとは思わなかったよ」
レベル差も戦力差もたいしてないのに、ほんのわずかな違いで試合に負けた。加州は演練相手の別の自分に向けて、小さく笑いながら声をかけた。
相手の加州清光は「あんたらも強かったよ。ま、強いていうなら主への愛の差かな~」と惚気けながら、三つ編みにした後ろ髪を主張するように手で払った。それを見て、「そういえば」と口を開く。
「なんでお前たち、みんな三つ編みにしてんの?」
「おそろい、可愛いでしょ」
「んー、まあ、そうね」
言葉を濁して返事する。演練で相対した部隊には、現在会話している加州のほかに乱藤四郎、不動行光、鯰尾藤四郎、江雪左文字、太郎太刀がいた。いずれも髪の毛の長い刀剣男士で、なぜかみんな髪を三つ編みに結っていた。太郎太刀にいたっては編み込みという手の込みようだった。
自分の本丸の仲間たちなら嫌がるなり、困惑するなりしそうなものだが、相手の部隊に気にした気配は微塵もなく、顔色ひとつ変えていなかった。むしろ嬉しそうですらあった。そんな佇まいで淡々と攻撃を繰り出す三つ編み部隊は、ちょっとした恐怖だった。
同位体はにこにこしながら話を続けた。
「これね、主が結ったんだ。一人で髪を結えるようになりたいんだってさ。そんなのいくらだって俺たちがやるのにね」
彼は自分の主はまだ幼いのだと言った。誰かに話したくてたまらないという様子だった。主のことが大好きだという気持ちはよくわかるので、仕方なく話に耳を傾ける。
「まあ俺たち練習台なわけなんだけどね、一生懸命にやってくれてさあ。もう可愛いのなんのって」
「あ、また加州さん、主さんがいないからって自慢話してるんですか?」
後ろ髪を三つ編みでまとめた相手の鯰尾がにやにやしながらやってくる。
「そう! だって、主が世界で一番可愛いからね!」
いい笑顔で答える相手に、加州は呆れながら笑って答えた。
「はいはい、ごちそうさま!」
2021/08/15
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