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2024年11月18日(月) 11:18:56〔1年以上前〕 更新

■No.6 ( 1

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ネタの覚書や小ネタなど。ジャンルは刀剣乱舞のみ。年齢制限のものには鍵をつけています。

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No.6 by Icon of admin みやこ 〔2年以上前〕

溶ける | #姥さに 暑い日にはアイス。


 暑い夏の日だった。
 その日は朝から気温が高く本丸の庭に植えられている木々からは蝉の鳴き声が響いていた。山姥切国広は額に浮かんだ汗を拭いながら、早歩きで廊下を歩いていく。厨番から審神者へのおやつに、アイスクリームを預かって来たのだ。ガラスの器にころんと載せられたアイスは冷たくて美味しいに違いない。早く届けてやろう。そんなことを考えながら執務室へ足を向ける。
「おい、主。入るぞ」
 返事を待たずに障子を開けた。室内から生温い空気が流れてくる。どうやら冷房が入っていないらしい。山姥切は顔をしかめ、柱に取り付けられたリモコンを操作をした。途端に涼しげな風が吹いてきて火照った体を冷やしていく。
「まったく、冷房ぐらいつけろ」
 呆れながら声をかければ、端末画面とにらめっこをしていた審神者は気まずそうに苦笑いをして、「あはは、すみません」と謝ってきた。山姥切はため息をつく。きっと自分一人しかいない部屋で冷房をつけるのはもったいない、などと理由をつけて使わなかったのだろう。
「熱中症にでもなったらどうするつもりだ」
「さすがにそうなる前に冷房を入れますよ」
「……どうだか」
 この人は我慢強いので、性もないところで無理をしかねない。山姥切は机の上にアイスを置き、審神者に食べるように勧めた。
「ありがとうございます。暑い日にアイスは嬉しいですね」
 そう言って、目を細めてスプーンを口に運ぶ審神者の姿をじっと観察する。体調は崩していないようだがやはり少し暑そうだ。せめて上着だけでも脱いだ方がいいかもしれない。ほんのり赤く色づいた頬、こめかみを流れる一筋の雫――、山姥切はごくりと唾を飲み込む。
「山姥切くん?」
 不思議そうに見つめられて山姥切は我に返った。それから慌てて視線を外す。今自分が何を考えていたのか気づき、動揺する。
「あっ……、私だけアイスを食べてるのは申し訳ないですね。よかったらどうぞ」
 差し出された器にはまだ半分以上中身が残っていた。受け取ってはみたものの山姥切にはそれを味わうことはできなかった。食べたくないわけではない。ただそれどころではなかっただけだ。山姥切は再び審神者をそっと盗み見た。白い肌に浮かぶ赤みが妙に艶やかに見えて仕方がない。湧き上がってきた煩悩を振り払うために山姥切はぶんと首を振った。
(だめだ。これ以上は)
 このままでは審神者に対して良くない感情を抱いてしまう気がする。だからといって彼女から離れてしまうのもそれはそれで嫌だった。山姥切は自分の心がよく分からなくなって頭を抱えた。器の中のアイスクリームはどんどん溶けて形を失ってゆく。
「……山姥切くん? 大丈夫ですか? なんだか顔が赤いような……」
 心配そうに覗き込まれ、山姥切は自分の顔がさらに赤く染まっただろうことを実感した。もう耐えられなかった。山姥切は無言で審神者の手を掴んで引き寄せると、彼女の唇を奪った。ほんのり甘い。バニラの味だ。一瞬感じた甘さに思考を奪われたが、すぐに唇を離した。審神者の顔を見ることができず、かといって手を放すこともできずに俯いていると小さな手が優しく山姥切の頭を撫でた。
(……このまま溶けてしまいそうだ)
 ガラスの器の中に入ったままのアイスのように。
畳む

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